4. 嵐を呼ぶ監理団体と実習実施者の「ある行為」

1.その昔、「嵐を呼ぶ男」という、泣かせる映画がありました。

それに因んで、本日のテーマは『嵐を呼ぶ監理団体と実習実施者の「ある行為」』。

正確には、『嵐こと不利益処分を呼ぶ監理団体と実習実施者の「ある行為」』。

まず、不利益処分とは、例えば、5月28日に法務省と厚生労働省が出した改善命令(2監理団体)や、出入国在留管理庁と厚生労働省が出した改善命令(1実習実施者)、認定計画取消し(17実習実施者)等のことです。

厳密には認定計画の取消しは不利益処分ではなく、認定基準への適合性を確認する事実行為ですが、コトの重大性から弁明の機会を与え、不利益処分の手続きに準じています。

そして、「ある行為」とは「技能実習法令上の違反行為」のことです。

したがって、技能実習法令違反となる「ある行為」が、具体的にはどんな行為であるかを知らずに監理事業を運営すれば、常に、法令違反リスクにさらされることになります。

“無難に”、監理事業や実習を継続していくことは、難しいと思います。

なぜなら、「ある行為」が端緒(キッカケ)となって、監理団体や実習実施者がリストアップされ、その中から、不利益処分(取消し、改善命令等)が決定される、そのような仕組みになっているからです。

 

2.それでは、今回の公示(https://www.mhlw.go.jp/content/11808000/000727053.pdf)を例に、「ある行為」が具体的にどういう行為であるのか、確認してみましょう。

監理団体に関しては、「監査を適切に行っていなかったこと」や「指導等必要な措置を講じていなかったこと」を、また実習実施者については、「認定計画に従って技能実習を行わせて」いなかったことを、改善命令の処分理由に挙げています。

また、技能実習計画の認定取消しについては、「労働安全衛生法違反により罰金の刑に処せられ」たことや「認定計画に従って技能実習を行わせていなかったこと」を処分理由に挙げています。

おそらく、これを読んで、「ある行為」が具体的にどういう行為なのか、すぐに分かる人は少ないのではないでしょうか?

公示は単なる見せしめではなく、具体的な抑止効果となってこそ意味があるとの思いから、機構指導課OBとして、「ある行為」の幾つかを以下に紹介します。

ただし、今回の行政処分等を念頭に置いたものではありませんので、くれぐれも誤解無きように。

 

3.監理団体に関して、「監査を適切に行っていなかったこと」に該当する「行為」とは、

⇒前回の(定期または臨時)監査を起算日として、3か月に1回以上の監査を実施していないこと。

⇒実習実施者から労災、失踪等の報告があったにも拘わらず、直ちに臨時監査を行っていないこと。

⇒実習実施者が認定計画に無い作業をさせているのに、監査等で実習の実施状況を確認していないこと。

⇒割増賃金に未払い分が発生していること等、監査で指摘しておらず、監査体制に欠陥があること。

 

「指導等必要な措置を講じていなかったこと」に該当する「行為」とは、

⇒実習実施者が備え付けるべき認定計画の履行状況に係る管理簿等帳簿類が未作成であること。

⇒実習実施者が記載すべき技能実習日誌等帳簿類につき記載の方法を指導していないこと

⇒監理責任者が必要な指導や適切な指導を行っておらず、監査体制に欠陥があること。

 

また、実習実施者に関して、

「労働安全衛生法違反により罰金の刑に処せられ」たことに該当する「行為」とは、

⇒労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかったことにより、公訴、略式命令後、罰金刑が確定したこと。

⇒虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出し、公訴、略式命令後、罰金刑が確定したこと。

⇒日本人職員に無資格で玉掛け業務を行わせたことで、公訴、略式命令後、罰金刑が確定したこと。

 

「認定計画に従って技能実習を行わせていなかったこと」に該当する「行為」とは、

⇒実習実施予定表に記載された内容と異なる作業に従事させていること。

⇒必須業務を全体の1/2以上の時間行わせていないこと。

⇒雇用条件書に定める率で計算した割増賃金を支払っていないこと。

 

「技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行ったこと」に該当する「行為」とは、

⇒技能実習生の服を掴んで強く引いたり、平手で叩く、暴言などの行為を行うこと。

⇒失踪を防止するために、旅券や在留カードを預かっていること。

⇒宿舎から外出する際に、実習実施者から許可を受ける必要があること。

などがあります。

その他、今回の処分理由とされた「認定計画に従って賃金を支払っていなかったこと」、「外国人技能実習機構の職員に対し虚偽の答弁をしたこと」、「虚偽の帳簿書類を提示したこと」、「技能実習計画の作成指導を受けた監理団体による実習監理を受けていないこと」などは、「あるある行為」。

そして「主務大臣の職員による検査を拒んだこと」は、「ありえない行為」、でなっとく~かも。

 

4.許可取消しや認定計画取消しにより、それまでにかけた膨大な時間と費用はすべて無駄になります。

加えて、信用は失墜し、5年間、技能実習ができなくなります。

これに比べれば、非常にわずかの時間と費用で、これらを回避することは可能です。

予防法務に徹したサービスを提供する当事務所にお声かけ頂くことが、最も賢い選択肢の一つです。

機構指導課での豊富な監督・指導経験と、技能実習法と特定技能制度に精通した知識をベースに、問題が小さいうちに発見して、改善策をご提案致します。

大きく、困難な問題に対しては、適正に改善するための具体案をご提示致します。

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作成者: mozart77

行政書士事務所を経営しています。はたらく外国人(技能実習生や特定技能外国人その他)が日本のそれぞれの地域で、安定して暮らしていくことができるよう、たくさんの守らなくてはいけない法律や決まりごとについて、雇い主や雇われる外国人の双方に、分かりやすく説明するお仕事をしています。”外国人の就労適正化に貢献すること”が、事務所のミッションです。

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